祖母から聞いた信州の風景、そして糸をめぐる様々な話。
丘は見わたす限りの桑畑。
その中を流れる小川や水車小屋。
かつて信州ではほとんどの農家がその桑の葉で「お蚕様」を飼っていたという。そして一年に何回も出荷されるおびただしい量の繭。多くの女性たちが製糸工場で繭から糸を紡ぐ仕事についていた。
こうして信州で生まれた生糸が海を越え、世界中のシルク製品を織り成していた時代が確かにあったのです。
シルク-誰もが憧れた奇跡の素材、そしてそこに至る長い長い糸のドラマ。


たった一本の糸のなかにも、込められている様々な物語。
信州で育ち、それを知っている私にとって大量生産された安い服が山積みにされ、無造作に扱われている近年の光景は、とても違和感を感じるものでした。
あまりにも安くものができ、深く考えもせずに買われ、簡単に飽きられ、使い捨てられる。
私たちは何か大切なことを忘れていないだろうか。
だから私自身がものづくりを始めたときに、大切に着てもらえる服をつくることは心に決めていました。素材はシルク。しなやかで軽く、身体に馴染む最高の素材。
信州でシルクを復活させたい。
海外の安いシルク製品が多く日本に輸入されるなか、ここでは何ができるだろうか。
私が見つけたアンサーは、今までの「高級志向」「伝統志向」から離れ、扱いにくかったシルクを180度見直し、ナチュラルでカジュアルな衣料素材として生まれ変わらせること。そのために最先端の技術も積極的に取り入れて、日常で生きる機能とデザインを追求することでした。
「着たいときに着る服」のマスト条件は、洗えること。
着る度にドライクリーニングに出さなきゃいけないなんて経済的じゃないし、そう思って着るのをためらう服はつくりません。
自由に着たい服だからこそ、しみとか汚れを気にしたくない。
そこで、先端技術の力をかり、高度な撥水性能をもつコーティングを施しました。
これで、人がたくさん集まるパーティーでも白いワンピースを着ていける。


シルクはもともと自分をリラックスさせたりリフレッシュさせるのには最高の素材。
「Japonica」はシルクの素材としての優位性と美しさを最大限に生かし、自分をリセットさせるリゾートで着る服をつくりました。
ここでも最新技術が活かされ、とうもろこしで作られたポリ乳酸などのグリーン原料をかけ合わせたハイブリッドシルクは、様々なバリエーションを可能にしています。
一つの繭から引き出される糸の長さはおよそ1200メートル。その糸が何本も集められ一本の絹糸が生まれます。
桑の栽培-お蚕様-繭-製糸-織物と、自然と人間が協同で創り出したこの「奇跡の素材」は、科学技術の力も加えられて「Japonica」として新しく生まれ変わり、私たちを優しくそして美しく包み込んでいくでしょう。その時、私たちは改めて自然にかえり、新しい自分を発見するに違いありません。
